「再生に挑む」

-経営効率化と医療再編を求められている自治体病院改革の現場から-

共著 :三村 經夫(元病院長)、冨田 一栄(公営企業経営アドバイザー)

著者紹介
   三村 經夫
徳島大学卒.医学博士、日本産婦人科学会専門医
徳島県つるぎ町立半田病院 元事業管理者(病院長兼務)
徳島県国民健康保険診療報酬審査委員会委員

銚子市役所に赴いた著者達3人
(右端が筆者)
 平成20年、銚子市立病院は医師引き揚げが発端となって病院休止となり、休止を決めた銚子市長はリコールに追い込まれた。その後病院は指定管理者の下で再開されたが、問題が多く批判を浴びていた。平成25年に新市長の下で新体制がスタートし、著書達3人は秋から銚子に招かれて、市の「行政アドバイザー(医療、福祉、保健担当)」として、病院再生に関わっていく。その後1年半に亘る「市立病院再生」の奮闘を記したものが本書である。
 銚子に赴く以前から関わっていたのが東近江市の病院再編事業だったが、此処では時間をかけて計画的に地域医療再生と病院再編が進められていた。東近江の随所に見られる「近江商人の三方良し」の自主的・現実的な生き方を背にして改めて銚子を眺めてみると、両者の地域文化や医療経営に対する考え方の違いが見えてくる。

【著書紹介(徳島大学卒医師が大学機関紙にて書籍紹介)】

 かつて夕張市(北海道)の経営破綻が大きなニュースになったが、その後銚子市立病院(千葉県)が休止という出来事があった(平成20年)。著者らは、平成25年10月に同市の行政アドバイザー(医療、福祉、保健担当)に抜擢された。その詳しい活動記録が本書である。同じ2次医療圏の旭中央病院との連携などを考え、指定管理者が医療公社となり再出発したが、道半ばとなっている。

 また、平成22年から関った滋賀県東近江市の病院再編の経過も紹介されている。3つの公立病院から、東近江総合医療センター(旧国立滋賀病院)が中心となり、滋賀医科大学の寄付講座が開設されたとのこと。振り返ると、平成19年の公立病院改革プラン(旧改革プラン)では、①経営効率化、②再編ネットワーク化、③経営形態の見直しが議論された。自治体病院の経営形態は、公営型と民営型に大別される。公営型には、地方公営企業法(一部適用、全部適用)、地方独立行政法人があり、民営型には、指定管理者泥土(公設民営)と民間譲渡がある。三村先生によると、公設公営と公設民営に「大差ない」と。越こうせつ民営は「魔法の杖」ではなく、最後は人にかかってくるという。

【出版案内】

「破綻の連鎖」......破綻の次は再生である。その次には...、実はまた破綻が続く、そんな現実があるのだ。一般企業ならそこで終わりだろうが、この連鎖が許される分野がある。“行政管理”がキーワードであろう。

 本書は、千葉県銚子市立病院が、再開後「再生」にならず「破綻の連鎖」となった顛末を間近で見ていた元銚子市行政アドバイザーふたりの手によるものである。銚子市はどこで迷走してしまったのか。それは銚子市だけのものなのか…?その萌芽は同じでも現実と真摯に向かい合い、市民の理解を得ながら「再編」に向かった滋賀県東近江の例を見ながらその問題点を鮮明にしていく。ただの現状分析・比較のみにとどまらず、地域医療の将来、その後に向けての提言にまで筆を進めている。

 本書は、地域医療や病院経営を柱に据えているが、破綻そして再生、その後を考えたとき、あらゆるジャンル、いわゆる「社会」の明日をデザインするためにも、必要な書となるだろう。

【講演参加者の声】

 昨年、三村先生と冨田先生の自治体病院改革にまつわる講演を聞く機会に恵まれました。私は、ある市の職員ですが、1年前から市民病院の事務に異動になり、ちょうどいろいろなことがわかりかけてきた頃でした。銚子市立病院の全面休止については、異動のときに頭をよぎりましたが、当時の報道を考えても「我が市ではあんなことはあり得ない、関係ない」と思っていたのです。でも、両先生の話を聞いていたら、「あれ?...他人事ではないのでは?」と感じるようになって......。そうなんです。破綻する病院って、「破綻の芽」は最初は小さいし、どの病院でもあり得るんだと。何度も、芽が出てきているのに、それを見ないふりしているんだって。講終了後に、お二人の先生をつかまえて、もっと話を聞きたいとお伝えしたら、本を執筆中という話でした。ようやく、すべてを知る事ができます。事務職員全員で読みたいと思っています。

【読者の声】

首長、官僚や自治体職員、自治体病院長などから多くの反響がありました

・元自治体首長  「分析だけでなく、時代の要請に基づく提案は、自治体病院だけでなく、公的性格を帯びたすべての組織にも当てはまる提案でもあると思いました」

・元厚労省官僚  「銚子市立病院の事例では、病院休止から今日に至る一連の経過を、詳細にその要因にまで遡り分析し考察された内容は、多くの自治体病院にとって大変参考になるだろうと存じます。東近江の事例についても詳しく報告されており、地域医療に果たす大学病院の大きな役割についても考えさせられます。
「地域医療構想の政策がうまく動くと個々の自治体病院も地域医療で果たす役割をますます明確に示すことが必要になると思います。地域の中でどのような役割を果たすのかが大きく問われます。単なる周辺住民の情緒的な思いだけを頼りにしていてはすまなくなると思います。病院の実態なども住民に常日頃説明することが大切になるのではないでしょうか。このような点からもこのご本が多くの自治体や自治体病院管理職に読まれることが望まれます。

・元厚労省医系技官  「全国の自治体病院が、県庁・市役所の担当者が購入し勉強してもらって、病院が良くなると、いいですね。」

・自治体病院長  「読後の感想として、案外自治体病院はこんなものかもしれないという不安,不信というようなものが残りました。当院でも人口減少や高齢化による、入院需要の減少を見込んで中期計画を立てておりますが、右肩上がりの成長期より、縮小すべき時期の病院運営はなかなか厳しいところがあります。首長さんとの関係をうまく維持しながら今しばらく職責を果たしたいと思っているところです。

・自治体病院副院長  「本当にタイムリーな内容です。当院の状況にも重なる部分が多々あり本当に参考になります。普通の頑張りでは繰り返す破綻の筋書きから脱出できない現在の自治体病院の仕組みを何とかしたいです。今後ともよろしくお願い申し上げます。」

・自治体病院事務長  「この本を読んで、うちの病院のことが書かれているのではないだろうか?と思いました。自治体病院の事情や問題点は、どこも似たようなものなのかもしれませんね。」

・元自治体職員  「(改革中の)それぞれの病院の姿勢を振り返りますと、その(改革に対する)熱量が後々になって大きな差になってしまうのかなと思ったりします。公立病院が良くなっていくかどうかは、先生の著書にもありますように、熱意を持ったトップマネジメントと人材配置にかかっております。先生の著書を多くの担当者が手にして、迫り来る危機に早く気づいてくれることを祈っております。」

・元自治体職員  「正に、自治体は現実を直視し、身の丈に合った政策を立案する必要がある、と思います。その際には、人口減少と超高齢社会を踏まえるとともに、地域資源の活用・関係機関との強固な連携を構築し、地域ぐるみで地域包括ケアシステムを実現していく必要があると考えます

・元自治体職員  「東近江で取り組んだことを第三者の目で記録として残していただいたことに感謝しております。後書きの中で、自治体職員に対する呼びかけ、心に響きます。厳しい状況下ではありますが、この本を読めば我が市の職員たちも心の底にいくばくかのものを宿せるのではと思っております。なるほどと思ったのですが、限られた資源で最低限この地域でしなければならないことをきっちりと押さえていたことに情勢が味方したんですね。何せ救急病院が市から失くなってしまったという現実がありましたから、すべきことははっきりしていました」





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